コンセント5周年に寄せて。
先日、和歌山市にあるコワーキングスペース〈コンセント〉が5周年を迎えました。
ここはおおはしぐみが初めて自主工事に挑戦した現場。
当日はイベントが開催され、大橋がコーヒーを淹れたりして楽しいひとときだったのですが、
今日は5年前のことを振り返ってみます。
「このカウンター取れる?」から始まった
コンセント運営メンバーとは元々友人でした。
ある時、「今度コワーキングスペースを作ろうと思うんだけど、このカウンターって取れるんかな?」
と相談されたことがきっかけで、自分たちでつくる道を歩むことになったのでした。
元はブティックが入っていたので、大きな造り付けのカウンターや棚があり、衣類が焼けないよう窓が塞がれていたのを覚えています。
「カウンターとるんだったら、ついでに棚とか、窓を塞いでる壁もとりたいよね」
と、カウンターをとるだけの話が大きくなりました。
当時私たちは設計事務所に勤務していて、
今のように工具やトラックも持っていなかったし、DIYスキルも持っていませんでした。
でも「設計やってるんだったら、工事もできるんじゃないの?」
という感じで相談されていました。
(はじめに言っておくと、この考えは大きな間違いです…)
初めての自主工事はわからないことだらけ、持ってないものだらけ
コンセントは建築的になにかしてるとかなく、
規模も小さいし、内容も最低限のものでした。
だから、まあなんとかなるだろう。
そう思ってたのに。いざ自分でするとなったらめちゃくちゃ大変!
工具がないから毎回ホームセンターにレンタルしに行ったり、
トラックがないから材料を買うのにも段取が必要だったり、
材料を手配するのも普段やり慣れてない作業で大変でした。
「床材はわかっても、床材を貼る接着剤はどれかわからない」
「接着剤ってどのくらいの量いるんだろう」みたいな。
今まわりと見渡すとDIYやってるよという知り合いが沢山いますが、
当時はそんな知り合いもなく、必死に調べて業者さんに相談してた気がします。
工事を通して個性がみえてきた
平日、仕事が終わった後に週末に向けて段取りを考えたり、準備をしたり。
工事は私たちと、運営メンバーと、友人たちで集まってやっていました。
花見の日に着工して6月にオープンだから、工事期間は2ヶ月ほどでしょうか。
2ヶ月間、週末は全潰れでしたが楽しかった。
たぶん工事してたみんなも楽しんでた。
朝はラジオ体操したり、お昼は誰かがお弁当を作ってきてくれたり、
徐々にそれぞれの得意分野が見えてくるのが面白かった。
片付けが得意な人、細かい作業が得意な人、作業が早い人、
電気工事ができる人、記録係の人。
そんな中で私たちは、設計者でありながら現場監督であり、大工的なポジションになったのです。
いつのまにか〈大橋組のふたり〉と呼ばれるようになり、
知らない間に「安全第一、大橋組」というポスターが貼られ、爆笑したのでした。
おおはしぐみの原型がうまれる
私たちが独立し、事務所を登録したのがコンセントのオープンから2年後。
「事務所名、どうする?」と議論したのですが、
この時みんなに付けてもらった名前を採用して〈おおはしぐみ〉としました。
おおはしぐみが大切にしていること、やりたいことは、年々少しずつ変化しています。
でも大きな方向性は変わってないかな。
手でつくることを楽しむ素直な気持ちを大事にすること。
きっとおおはしぐみの原型は、コンセントを工事していた時間とともに誕生しました。
コンセント作ってなかったら今頃事務所名は「大橋建築設計事務所」になっていて、
愛車がトラックなんてことはなかったと思います。
コンセントの5年を振り返って
5周年を祝う交流会には、コンセントの利用者の方達がたくさん参加していて、
口々に「この場所があってよかった」というのでした。
コンセントがあったから起業の道に進むことになったとか、
こんな出会いがあったよって話も聞けました。
そして当時一緒に工事したメンバーとは、「あの時車がパンクして大変だったね」とか
「このカウンター、よく搬入できたよね」とか自然と思い出話がでてきます。
5年も維持してきた運営メンバーはほんとにすごいな、と思うんだけど、
5年経っても「ここを作ってくれてありがとう」と言ってくれるのもすごいことだなと思います。
そんな訳で5年という月日には感慨深いものがありました。
コンセントを祝いながら、自分たちの成長を振り返っているような、そんな気持ちです。
うん。当時よりだいぶいろんなことができるようになった。
5周年、おめでとうございます。
これからも誰かの大切な場所になり続けて下さい。
よろずまちヒルズの設計依頼待ってるよ。